たばこの話題はGoogle先生がお嫌いなのであらかじめサマライズしておくと、今回のお話は「消費税以外の物品税がかかるモノを販売するときの価格」をどう導出するか?という観点を裏側に、2020年10月に予定しているたばこ税増税額以上に商品を値上げするのは是か否かという話を会社のメンバーとした、というお話です(サマリおわり)
さて、昨今の健康志向もあって、たばこ…特に紙巻たばこを取り巻く環境は悪化しているのは周知のとおりですが、それでもなお喫煙者はいるというのが現実で、僕のセクションにも例外なく喫煙者はいます。
そんな中、国内のたばこ専売業者であるJTから、10月にたばこの販売価格を値上げするというPRが発せられました。
JTは、10月1日のたばこ税増税等に伴い、計224銘柄のたばこを値上げすることを発表した。対象となるのは、紙巻たばこ136銘柄、葉巻たばこ16銘柄、パイプたばこ3銘柄、刻みたばこ3銘柄、かぎたばこ18銘柄、加熱式たばこ48銘柄。1箱当たり主として50円の値上げを行なう。
これには、うちの喫煙者さんたちも大ブーイング(^▽^;)
「取りやすいところから取る悪税」とか「じわじわ値上げする茹で蛙課税」とかのエモーショナルな部分はともかくとして「1本1円の増税なのにそれ以上に値上げするのはおかしい!」という面白い意見があったので、それについてみんなで少し深堀りしてみました(←え、本業は…?)。
えぇ。みんな仕事が煮詰まっていて雑談で現実逃避したかっただけというのが正直なところです。本業外の部分の話なので、たぶん間違ってるところもあると思いますが、そんなところは温かくご指摘いただければと(^▽^;)
まず、あまり知られていないことですが、たばこにも消費税がかかっています。
そして、たばこ税と消費税とのTax on Taxの関係にあります(ガソリンと一緒)。
この2点を知らないと「1本1円の値上げだから1箱20本入りなら20円の値上げは分かる!値上げ50円だから残り30円はJT丸儲けだ!」という話になってしまいます。
つまり、今回のたばこ税増税での影響額というのは22円(20本入りの場合)になるのが正解です。これは財務省が公開している「たばこ税等に関する資料」で読み取ることが可能です。
出典:たばこ税等に関する資料 : 財務省
490円のたばこ1箱に約310円も税金とられているんですね…(;´・ω・)
所得税の最高税率が45%、それだって年収4,000万円超の部分にしか適用されないので、たばこの税率63.1%って驚異的な数字ですよねΣ( ̄□ ̄|||)
ここまでの議論?では「30円だろうが28円だろうがやっぱりJTは儲かる!」となってしまいました。上の表でいうところの490円-310円=180円がJTの取り分、そこに値上げ分28円が乗っかるからやっぱり儲かるんじゃん!という指摘ですね。
儲かる儲からないを別にして、次はたばこを売る側(小売り側)はどこで稼いでいるのか?に焦点を当ててみます。
たばこは全国一律の値段での販売(定価販売)が義務付けられています。いわゆる一般消費品のように仕入れ価格・販売価格の関係であれば、大量仕入れ→仕入れ価格低下→値下げして販売競争or利益(゚д゚)ウマーなのですが、たばこではそれをしてはいけないことになっています。そのため、たばこを販売した小売店に対してJTが販売手数料を支払う仕組みとなっています。この手数料率が、販売価格の10%となっています(これはJTの公開資料だとFact Sheetからしか見つけられませんでした)。
このため、たばこ1箱50円値上げすると、必然的に販売手数料は5円上昇することになり、結局のところ「値上げ1箱50円-たばこ税20円-消費税2円-販売手数料上昇5円=JT売上高増分23円」の結果になり、JTの手残りは値上げ分の半分未満ということが分かります。
実際には下表のように積算で計算すると増収分は20.45円となると想定され、この20円余りの中で価格改正に係る経費を吸収(20.45円はJTにとって増収ではあるが増益ではない)し、値上げによる喫煙者離れ(減収要因)を考慮すると、JT自体の手残りは思ったほどではないんじゃないかな?というのが参加者の意見でまとまりました。
[490円のメビウス1箱あたり・試算]
2020年9月末まで | 2020年10月以降 | |
販売価格 | 490円 | 540円 |
販売手数料 (販売価格の10%) |
49円 | 54円 |
消費税内税10%分 | 44.54円 | 49.09円 |
たばこ税 (国税・地方税合算) |
264.88円 ※1,000本あたり13,244円 |
284.88円 ※1,000本あたり14,244円 |
JT社手残り | 131.58円 | 152.03円 |
いちばん面白かったのは、怒りの矛先をJTに向けていたメンバーが、その矛先を一斉に財務省に向け変えたところでしたね。財務省所管だからこそ、族議員の圧力もお構いなしに好き勝手たばこ税はいじれてしまうんですよね。
JTは現在はイチ民間企業でもありますので、これからも頑張っていってほしいなぁ~と願わずにはいられません。
なお、たばこ税は来年10月にも再び増税します(上昇率は今回と一緒)ので、また来年にも同じような議論をしそうですね(^▽^;)
と、いうIT屋さんの暇つぶしの雑談でした(*´ω`*)